研究科長 / 学部長挨拶
大阪大学人間科学部は、1972年に「人間科学」を新たな学問として興隆しようという独創的な視座や目標から設立された我が国初の「人間科学部」であり、50年以上の歴史を刻んできました。その歳月の中では、『人間科学』という学問は何であり、何を学び、何を研究するのかという問いが繰り返しなされ、それぞれの時代ごとにその時々の教員ならびに学生らによってそれらへの回答が行われてきました。時代の流れとともに、それらの答えは変遷したかもしれませんが、「人間科学」に取り組むという目標は多くの教員・学生らにおいて重要視されてきました。
設立の頃から、大阪大学人間科学部は、行動学、社会学、哲学、人類学、教育学、生物学などの多様な視座から人間や社会への理解のために文理融合的な教育研究の展開が目指されてきました。そして、近年では、「学際性」、「実践性」、「国際性」という3つの理念を部局目標へと整理し、共生学という学問領域を立ち上げることで、4つの学系(大学院)・学科目(学部)と8講座・33研究分野からなる幅広い教育・研究の体制へと発展しています。さらに、大学と社会との結節点となって、学内外の皆様とともに新たな価値や結びつき・協働を生み出すための実践活動に取り組むための附属未来共創センターを設置し、幅広く活動しています。
本部局が日本での唯一の『人間科学部』であった設立当初に比べて、現在では40を超える大学部局が日本国内で設置され、広がりをみせています。この広がりの原動力は何でしょうか。また、なぜ増加してきたのでしょうか。人間や社会を取り巻く課題は複雑化・多様化してきましたが、その経緯の中で、「人間とは何か」、「人間社会とはどのようなものか」、「人間と自然とはどのようにかかわるべきか」などの古くて新しい根源的な問いかけが『人間科学部』の設立を後押してきたと思われます。そして、それらの問いは今後もますます重要視されるはずです。本部局は、「時代が突きつける新しい課題に対して、科学的方法を信頼し、学際的に対応し、人間への理解に基づきながら、現実に向き合う開かれた精神」を重んじており、この理念や想いは「人間科学」に携わる方々や多くの皆様とも分かち合えることでしょう。
現代の社会的課題の多くは一つの学問領域からでは十分には捉え切れず、分野横断的な発想や着眼点、方法論からの探求や取り組みが必要となっています。そこで、本部局は大阪大学内での部局を横断する学際的研究や国内外の大学や研究機関との連携、そして産学官を通じてのさまざまな人々との協働を活かした学際的な『人間科学』を進めています。一方、10~20年後などの未来での人間科学や科学一般の礎ともなりえるように、従来からの学問分野やそれらの体系での専門知も深化させることも重要と考えます。過去から学びつつ、未来を志向し、新しい価値や専門知を創り出すための基盤的な『人間科学』も進展させるのです。本研究科には、複雑多様化する社会的課題に直面するための先端的な学際融合研究とともに、伝統的な専門分野・専門知の研究の双方を受け入れ、共に進展させていくという柔軟な組織文化と優秀な人材が揃っており、今後もこの組織文化は堅持・発展させることで人間や社会に貢献したいと考えます。
これらの人間科学研究科・人間科学部のミッションを達成するためには、人間科学に粘り強く取り組みつつ国内外の学術研究を先導する若手研究者・大学院学生、または、社会や世界のさまざまな地域や階層で活躍できる人材を絶えず育成していくことが重要です。本部局は、学生や若手研究者の支援にも継続的に努めていきます。
人間科学という約半世紀前に芽生えた学問領域が、社会とのつながりを介して新しい知、言わば共創知へと昇華変容しながら今以上に人々に注目されていくようにすること、そして社会へのインパクトを共に創出することが本部局の教員・学生らの挑戦です。いわば、『人間科学』を今以上に社会に根付かせること、『人間科学』に基づく新しい価値の創造を目指します。そのために協働・連携してくださる皆様からのご支援と協働をお願い申し上げます。