REPORT
第一回共創知研究会
大学が野に出るとはどういうことかー
フィールドから生まれる共創知
講師 竹川大介
北九州市立大学文学部 人間関係学科 教授
日時:2019年7月19日16:00~18:00
場所:大阪大学人間科学研究科 ラーニングコモンズ
参加者:27人
未来共創センターは今年度より共創知研究会を立ち上げました。第一回の研究会では、人類学者であり、地域おこしや演劇など様々な活動をされている北九州市立大学の竹川大介先生を講師にお招きし、「大学が野に出て地域と交わること」による創発の可能性についてお話いただきました。
野研的フィールドワーク教育
地域との関わりの背景に「学問」は不可欠であり、竹川先生のゼミに所属する学生たちには地域から学ぶフィールドワークを経験させてきた。そのなかで重要な点として、いかに継続可能かということを考えている。地域活動、地域とのかかわりは、一過性のボランティア活動や社会体験ではなく、一生続く関係を覚悟するものである。予算や制度に依存せずに自立してうごけるシステムづくりが重要である。
フィールドから発見するということは、料理をするようなもので、素材を探し(フィールド調査)、調理し(分析・考察)、人に食べてもらう(発表)という一連のプロセスを含む。学生たちには、自由にテーマを決めさせている。学生が自分から始めない場合にも、できるだけ自ら動くまで待ち、失敗しても大丈夫だからやってみるという姿勢で、まわりをまきこむ「ネットワーク型」の集まりをつくるようにする。例えば、プロジェクトのリーダーを新人にまかせることによって、人がまきこまれる構造が産まれている事例がある。
フィールドワーク教育によって創発されたもの
屋根裏博物館、北方シネマ、みつばち倶楽部、アートプロジェクト、「縄文稲作」や酒の醸造、大学に植えられているヤマモモを利用した大学発ブランドの製作など、たくさんの成功事例が紹介されたが、なかでも旦過市場の「大學堂」の取り組みは秀逸である。学生たちは、バイトをするよりも面白いと言い、自ら新しいものを創りだしていく。Incentive(外発的動機づけ)ではなく内発的なモチベーションを大事にしている。野研的フィールドワークの教えのなかで、互酬性は、時間に対する対価であり、学生たちもプロの意識をもって真剣にプロジェクトに望んでいる様子が紹介された。
常識や社会技能を学ぶのではなく、常識を壊すこころみ(フィールド=制度の外にでること)が重要であるというメッセージが印象的であった。
質疑応答・ディスカッションを通じて
講演後、学生から「プロジェクトで失敗した経験」や、「テーマはどのように見つけるか」といった質問があがった。竹川先生からは、ミツバチ・プロジェクトも当初はうまくいかなかったという事例を紹介いただき、失敗を恐れず、テーマは現場でニーズにそって見つけていくものというコメントをいただいた。「現場から、共創知が生まれた経験」について、旦過市場での大學堂の運営から生まれた「大學丼」についてふれ、「予期しなかった知見が別の形でたちあがっていく」プロセスを紹介いただいた。また、大学の制度のなかでプロジェクトを実施・継続する工夫や、SNSなどのメディアの活用による広報についても多様なご経験にもとづくコメントが聞かれた。様々な成功事例が紹介されたが、これは特異な「名人芸」というわけでなく実際にできることで、他の先生方にも参考にしていただきたいとの竹川先生の熱いメッセージとともに会を閉じた。
(文責 木村友美)
◆外部リンク:旦過市場『大學堂』 https://www.daigakudo.net/